Episode02「助けて!ブリーダ様」

「今日もありがとうございました。またお待ちしています」
「ほっほっほ。いいんですよ。またうかがいますから」

幸男に見送られて、
ブリーダ様は、颯爽とクルマで走り去りました。
何百年も続く名家の後継ぎで、町はずれの大豪邸に住んでいるんです。

クルマのメンテナンスがてら、
いつもサティオでティータイムを楽しんでいきます。

「おや?これは忘れもの?」
ブリーダ様が座っていたソファに荷物が置いてありました。

「早く届けなくちゃ!」
とはいえ、幸男は、次のお客さまとお約束が。。。
「ああ、それなら自分、行きますよ」 とメカニックの熊田さん。
代わりに届けることになりました。

ブリーダ様の家は、初めての熊田さん。
到着してビックリ。
立派な門と、はるか向こうに見える巨大なお屋敷。

(うわ…とんでもなく大きい家だな…)
緊張しながらベルを押そうとしたとき、
お屋敷の方から何かが向かってくるのが見えました。

どうやら、犬らしき動物がこちらへ走って来ます。
(ブリーダ様の愛犬なのだろうか?)

どんどん近づいて来ます。

(お? けっこう大きい? )

(お?おお??)
(汗汗汗汗汗汗汗汗汗汗汗汗汗汗汗汗)

目の前にいるのは、
自分の数倍はありそうな巨大なドーベルマン。

獲物を吟味しているかのように
ハッハッとよだれを垂らしています。

お屋敷だけでなく、犬までこんなに大きいとは!!!!
熊田さんは、恐怖のあまり動くことも喋ることもできません。
(に、逃げなくちゃ…)

次の瞬間、ドーベルマンは、
熊田さんを頭からパクっとくわえてしまいました。

しかし、食べられてしまうかと思いきや、
ガジガジと甘噛みでじゃれているだけ。

とはいえこの大きさ。
熊田さんは抵抗できず、されるがまま。

自慢のツナギも毛並みもよだれで、べちゃべちゃ。

熊田さんがいろいろなことを諦めようとしたそのとき、
ブリーダ様がやってきました。
「ブ、ブリーダ様、助け…」

「ほっほっほ。よかったですねドドベルさん。
新しいお友達ができて」

「今度は、ドドベルさんもお店へ連れて行ってあげましょう。
ほら、もう、お離れなさい」

(お、お友達…? お店にも…)

一抹の不安を覚えつつも
こうして熊田さんは九死に一生を得たのでした。
愛犬のドドベルさんにすっかり懐かれてしまった熊田さん。

最近では、お気に入りのクルマに乗ったブリーダ様と共に
ドドベルさんもお店に来てくれるようになりました。

今日もブリーダ様は、点検待ちの優雅なティータイム。
一方のドドベルさんは、整備中の熊田さんから片時も離れません。

「ほっほっほ…食べはしませんから、ご心配なく…」
ドドベルさんから、ちょっかいを出され、よだれまみれになりながらも
整備を頑張る熊田さんなのでした。

このエピソードは私の体験が元になっています!

  • 長岡本社店

    趣味は釣り。本マグロを狙って、山形、伊豆、沖縄にも足を伸ばします。お好きであれば、今度ご一緒にいかがですか?